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仙台高等裁判所 昭和24年(を)201号 判決 1949年12月12日

被告人

白河定雄

主文

本件控訴はこれを棄却する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

同第二点について、

記録を調査するに、本件被告人に対する起訴状は昭和二十四年三月七日と同月二十八日の二回に亘つて提出されたのであつたが、原審は両者を併合する旨の決定をしないで、事実上併合審理をしたのであつて、右は刑事訴訟法第三百十三條に違反してゐることは所論の通りである。然し右のやうな法令違反は絶対的控訴理由に該らないのであるから、その違反が判決に影響を及ぼす虞あるときに限り控訴の理由とすることができるのである。従つて右のような違法があつても事実上併合して公判審理の手続が適法に施行された以上、その違法は判決に影響を及ぼさないことが明である。しかのみならず、昭和二十四年三月二十九日の公判調書に依れば、弁護人は被告人に対する三月二十八日附起訴状は本日送達を受けたがその公訴事実は三月七日附起訴状記載の公訴事実と関連してゐると思はれるから事実関係調査の爲公判期日を延期されたい旨陣述したので同日の公判においては人定質問のみで終了したこと、第二回の公判期日たる同年四月八日の公判調書に依ると檢察官は三月七日附及同月二十八日附起訴状を朗読したので裁判官は被告人に対し刑事訴訟法第二百九十一條第二項、刑事訴訟規則第百九十七條第一項の事項を告げて被告人及弁護人に陳述を促したところ、被告人側は何等異議を留めずして各起状記載の事実について陳述してゐるのであつて、これ等の事実と併合罪の関係に立つ二個の事件について同時に審判される場合にはその手続を併合すべきであることを考え合せると原審第二回公判期日において裁判官はその冐頭において、職権で両者を併合して審理する旨の決定をしたことを窺知しうるのであるがそれに関し適法な告知方法が執られなかつたことを認めえられる。ただし右の違反は被告人の権利を毫も侵害しないのみならず、却つて被告人側に利益な取扱をしてゐるのであつて被告人に不利に判決に影響を及ぼしたということは出來ないから、これを以て控訴の理由と爲すことはできないのであつて、原判決の破棄を求める論旨は採用できない。

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